三谷商事株式会社 ビジュアルシステム部

mitani corporation
  • 製品ラインナップ
  • ダウンロード
  • サポート
  • 対応OS一覧
  • 事業紹介

開発システム 事例AI(人工知能)を活用した地層解析技術

地層の堆積物から、非常に壊れやすく複雑な形態を持つ微化石を、 AI(人工知能)を用いて大量に鑑定し、自動的に分取するシステムを世界で初めて開発しました。これまで膨大な時間と労力をかけて専門技術者が行ってきた微化石の選別作業を、全自動・高速に行えるようになりました。微化石の鑑定による地層判定、分取された微化石から詳細な年代を推定することで、石油探鉱などで迅速で高精度な地層解析が可能となります。
(産業技術総合研究所(産総研)、日本電気株式会社(NEC)、株式会社マイクロサポート(マイクロサポート)との共同研究です。)

プレスリリースPDF資料はこちらから
資料.png

開発の社会的背景

 資源探鉱や地質災害への対策などで、現代社会には地層の解析を必要とする場面が多々見られます。地層を解析するために有効なツールのひとつが「微化石」です。微化石は、地層中に含まれる放散虫、有孔虫や珪藻など、数マイクロメートルから数ミリメートルの大きさの生物の化石です。微化石の鑑定から、その地層ができた時代や、その当時の環境を特定できます。さらに微化石の微量元素組成や同位体比組成の測定から、地質ができた時代やその環境に関する詳細な情報が得られます。このように微化石は地層解析を進めるための重要な指標であり、地層の成り立ちや地球環境の変遷を研究する上で不可欠なツールです。
 しかし、微化石は複雑な形態を持つため、これまでは熟練した微化石の専門技術者が長時間かけて顕微鏡下で微化石を1つずつ手作業で鑑定していました。さらに微化石の微量元素組成や同位体比組成を測定するには、顕微鏡下で微化石を1つずつ拾い上げて、専用の試料台に整理して再配置する必要があるため、専門技術者でも相当な時間と労力がかかっていました。また、微化石に限らず微小な粒子を取り扱う鉱工業や農林水産業、医療分野などの検査試験などでも、人材確保や労働時間の軽減が求められています。

0301-01.jpg
図1 複数の微化石が集合した顕微鏡写真
さまざまな形態の放散虫や珪藻の微化石が見られます

ハードの構成

 今回開発したシステムは、顕微鏡部、マイクロ・マニピュレーター部、AI部からなります(図2)。顕微鏡部は、コンピューター制御された電動X-Y ステージと高解像CCD顕微鏡カメラが実装され、自動的に微化石などの多様な粒子の画像を取得し、それらの位置を精密に記録できます。マイクロ・マニピュレーター部は、微化石の位置情報をもとに微化石を分取し、所定位置に集積する機能を持ちます。マイクロ・マニピュレーターの先端は、繊細でデリケートな微化石を壊さずに分取するため、2本の針で摘まむ一般的なタイプの箸型ではなく、極細のガラスチューブで空気を吸引して微化石を吸着するスポイトタイプを採用しました。AI部の学習アルゴリズムには、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network; CNN)を搭載したディープラーニングのソフトウェアを採用したことで、これまでの機械学習では困難であった複雑な形態の微化石を迅速、正確に鑑定することが可能となりました。また、顕微鏡のステージ上に粒子を散布すると複数の粒子同士が重なり、それが画像処理の際に1つの粒子と誤判定されてしまうため、散布した粒子が一定間隔で配列するような試料台を新たに考案・作成しました。
 これらの複数の機能を有する総合的なシステムの開発により、顕微鏡のステージ上の試料台に散布した多数の粒子の画像を取得し、そこに含まれている微化石をAIによって鑑定し、それらを破壊することなくマイクロ・マニピュレーターで分取することを自動で、連続的に行えるようになりました。

0301-02.jpg
図2 今回開発したシステムの全体像
下左写真:試料台に微化石を散布し、マニピュレーターで分取する様子。
下右写真:マニピュレーター先端部の拡大。

ソフトの動作

 今回開発したシステムの作業では、学習フェーズを経た後、運用フェーズを実施します(図3)。
 学習フェーズでは、①産総研で保管する地質コレクションを用いて大量の粒子画像を取得し、学習画像(教師データ)として整備、②特定の微化石を含むさまざまな粒子の形状をAIが学習してモデルを構築、を行います。①では、例えば教師データとした3万個の粒子画像を取得するのに数か月を要していたところを、今回開発したシステムに搭載した画像処理により、わずか数日で収集できました。②では、教師データを用いて、AIで特定の微化石を鑑定できるモデルを構築します。正答率が十分に上がるまでモデルのテストと再構築を繰り返し、図4のように非常に酷似した2種の放散虫について、90 %以上の正答率で自動鑑定できるモデルが構築できました。
 運用フェーズでは、まず①顕微鏡のステージ上の試料台に散布した微化石を含む粒子の画像を自動的に取得し、同時に試料台上の位置情報をシステムが記憶、②学習フェーズの②で構築したモデルを用いて微化石を鑑定、③分取対象の微化石をシステム上で選択、記憶した位置情報をもとにマイクロ・マニピュレーターで対象となる微化石を分取し、所定の位置に集積、を行います。これらの大量に集積された微化石は、微量元素組成や同位体比組成などの化学分析の試料として用いることができます。
 従来、こうした作業を行うには、専門的な鑑定技術をもつ人材の育成から始めると数年、教師データとなる画像の取得と整備に数か月、単一種の微化石1,000個体の鑑定と分取に数日を要していました。一方、今回開発したシステムでは、数か月で教師データとなる画像の取得とAIを用いたモデルを構築し、単一種の微化石1,000個体の鑑定・分取を3時間程度で行うことができます。運用フェーズでは特定の微化石の分取と集積を長時間、自動的に行えるので、地層解析を効率化できます。また石油探鉱などでは、このシステムによって迅速で高精度な地層解析が可能となります。さらに、これまで人の手では難しかった100マイクロメートルにも満たない微化石の分取と集積も可能なので、今回開発したシステムは地層解析技術として新たな道筋を与えるものです。

0301-03.jpg
図3 今回開発したシステムでの作業行程

0301-04.jpg
図4 今回開発したシステムで鑑定できる放散虫の酷似した2種の個体例
これら2種を90 %以上の高い精度で区分可能。

今後の予定

 AIの学習作業による実用的なモデルを充実させるため、より多くの種類の微化石について教師データを整備します。その後、今回開発したシステムにより、実際の石油探査現場や調査・研究現場などでの地層解析作業を効率的に推し進め、その有効性の確認とともに、このシステムの普及を促進します。また、微小な粒子の扱いに長けているというシステムの特長を活かした社会での汎用的な活用を目指し、鉱物や火山灰などの微化石以外の粒子についても、このシステムの有用性を検証します。

本件問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
地質情報研究部門 海洋地質研究グループ
主任研究員 板木 拓也
〒305-8567 茨城県つくば市東 1-1-1 中央第 7
TEL:029-861-3770
E-mail:t-itaki@aist.go.jp

トップへ